ハッピーエンドなんていらない



嘘をつくたびに心が痛くなった。

でも感じる息苦しさも全部無視してやった。


「…友だち?」

尋ねる雪に大きく頷く。

「そう、友だち」

腕がほどかれて自由になった腕を振って、家に向かって走り出した。

バレバレの嘘、雪の言葉を肯定するような態度。


友だちなんて、ただの友だちだなんて、自己暗示にしかすぎなくて。

少しでも好きじゃなくなるようにと、自分の心にも嘘をつこうとしてる。


人のことを好きじゃなくなる魔法が、どこかにあればいいのに。



荷物を乱雑に部屋に放り投げた。

散らばったそれらを気に留めることもなく、わたしはベッドに飛び込んだ。

そうして頬を伝う涙を気にすることなく眠りについた。

< 68 / 265 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop