ハッピーエンドなんていらない
誰かに見られてはいけないと乱暴に涙を拭った。
慌てて黒板に書かれた文字を消す。
なかなか消えなくて、改めて強く書いたことを後悔する。
それと同時にまた涙が込み上げてきそうになって、涙をこらえながら強く黒板を消す。
パタパタと遠くから近付いてくる足音が聞こえてきて、黒板消しをそっとおいた。
大丈夫、泣いたって分からないはず。
パチンと軽く頬を叩いてから、その足音が通り過ぎるのを待った。
けれどその足音はわたしのいる教室の前で止まった。
そうしてガラリと音を立てて、教室の扉を開ける。
「あ、彩芽…」
その人は、汗だくになりながらわたしの名前を呼ぶ。
そこに立っていたのは雪だった。