ハッピーエンドなんていらない
なぜだか、走ってきたようだ。
どうしたのだろうと首を傾げてみてからハッとした。
…そういえば、図書室にいないことを伝えていなかった。
雪の部活が早く終わるのはよくあることだ。
最近はよく紫苑や湊よりも早く来る。
…多分、図書室に行ってわたしがいなかったから探してくれたのだろう。
雪はわたしの顔を見ると、良かったと胸をなでおろした。
わたしはさっきの文字が隠れるように一歩前に出ると、
「雪、相当走ったみたいだけど大丈夫?」
雪に心配そうに声をかける。
雪はああと呟いてから、大きく深呼吸をした。
「彩芽が、図書室にいないから、心配になって…」
途切れ途切れに紡がれる言葉は、確かにわたしを心配してくれたもので、なんだか嬉しくなった。
「ごめんね、カップルがいたから、入れなくて」
えへへと笑うと、雪は不思議そうに首を傾げた。
「いつもなら、人がいても気にしないのに?」