ハッピーエンドなんていらない



ははっと笑った雪が、そっと私を見直して。

さきほどとは違う、なんとも言えない目でわたしを見つめて、

「それで、結局、何してたの?」

また、そう尋ねる。


…隠せないことは分かっていた。

もう、すっかりバレていて、隠せないことなど知れていた。


だけどわたしは、

「…黒板、消してたんだって」

嘘に嘘を重ねて、自分を嘲笑う。


雪はそっかと笑いかけてから、わたしの方に歩いてくる。

それからわたしの後ろの、日直の名前の目の前に立った。


あの文字は、完全には消しきれていなかった。

かすかにチョークの跡と、わずかであるがその色が残っていた。

消しきれない想いが、残されていた。


雪は消しきれなかった文字をそっと指でなぞると、悲しそうな笑みを浮かべた。

「もう知ってるんだから、隠さなくたっていいのに」

わたしを、悲しげな目で見つめた。

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