ハッピーエンドなんていらない
もう知ってるんだから、か。
だけどわたしは何も言わないまま、ただ雪を見つめていた。
ただそれでも雪も何も言わないから、そっと口を開いた。
「…知ってたんだ」
わたしの問いに、雪はゆっくりと頷く。
「ずっと前から、彩芽の想いは知ってるよ」
悲しそうな雪の笑みが、そっとわたしの心をえぐるようだった。
…ずっと前って、一体いつから…?
口にしてないのに、雪はわたしの聞きたいことを悟ったのか、
「湊と紫苑が付き合う、ずっと前から」
それだけ答えてくれた。
明確にいつからかは教えてくれなかったけれど、だいたい、分かった。
紫苑を好きと言いながらわたしに構ってくれるのは、ずっと想いを知ってたから。
わたしが黒板にこうして書くまで、嫌に問い詰めることはしなかったのは、わたしが必死に隠してると知ってたから。
雪なりの、優しさだった。