ハッピーエンドなんていらない



それを見て胸が締め付けられるように苦しくなった。

とてつもなく、悲しくなった。

きっとわたしが捨てたくなかったサイン。

湊への想いを消したくないという、叫びだった。


「消せないんだよ、」

ねえ届いてと、雪に声をかける。


わたしの声に雪がゆるりと振り返って、その姿が滲んでいるのを知った。

歪んでいく雪の姿と、暮れた光に照らされる教室。


「消せないの、消したくないの。

でも消さなきゃいけないの」

苦しかった、消そうとしても白く滲むばかりだったから余計に。

未練がましくて、決してきれいには消えてくれなかった。


親友の彼氏なのにと分かっていながら、わたしは湊を好きでいたかった。

どんなに歪な恋だとしても、周りになんと言われても、きっと。

でも、消さなきゃいけなかった。


「…消さないと、湊も紫苑もきっと悲しんじゃうから。

わたしの所為で、2人を泣かせたくはなかったから」

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