ハッピーエンドなんていらない
3.
やっと呼吸が楽になった。
なんとか泣き止んで深呼吸をして、やっとの思いで息がしやすくなった。
それは本当に泣き止んだからかもしれないし、雪に打ち明けたことで気持ちがスッとしたからかもしれなかった。
泣き止んだわたしの髪を、雪がくしゃりと乱した。
「彩芽は、優しいよな」
ポツリと呟かれた言葉に、訳がわからず首を傾げてから横に振る。
大きく大きく横に振る。
「わたしは、優しくなんてない」
消しきれない想いがその証拠だった。
わたしは優しくないのだ、出来た人間ではないのだ。
紫苑のためにと言い訳をして、結局は想いを捨てきれないままで。
ズルズルと引きずりながらも、それを隠して微笑むズルい奴だ。
秋祭りの時だって、湊と2人きりになれて嬉しかったんだ。
わたしは、嬉しくてたまらなかったんだから。
「彩芽は優しい。おれは、そう思う」
雪の優しい言葉に、不意に目に涙がたまる。