ハッピーエンドなんていらない
すごいな。
わたしはどんなに酷いこと言われてもなかなか泣かないのに。
昔から女の子らしく弱かった紫苑を守ることがわたしの役目だったから、
無情だとか冷血だとか、良く言えばクールだとかよく言われていた。
でも、どんなに酷いことを言われても、幼馴染の3人がいる限り、傷付かなかったのに。
すごいなあ。
湊は、なんともない顔をして、わたしの心にアッサリと傷を付けてみせるんだ。
「やだなあ、冗談やめてよ。
別に雪のことが嫌いなわけじゃないんだけど、付き合うとかないない」
そうだよ、雪のことは好きだよ。“友だち”として。
湊にもおんなじこと、言えたらいいのにね。
「ひどいな。まあ、おれも彩芽と付き合うなんて遠慮したいけど」
頭の後ろで腕を組んでそんなことを言ってのける雪に、ムッとして頬を膨らませてやる。
言い出しっぺの湊は、冗談だと言って笑っていた。
その笑顔を見るたびに、胸が苦しくなる。
想いが消えないばかりか募っていく。