ハッピーエンドなんていらない



だから、しばらく考える素振りをしたあと、コテンと首を傾げた。


「わかんない、気が付いたら好きになってたから」

答えに困ってそう言うと、雪はそうだよなと言ってクスッと笑った。

そんな雪の横顔をジッと見つめてから、

「雪は?」

そう問いかけてみる。


雪はニコリと笑みを浮かべたまま、

「彩芽と同じ、気付いたら好きだった」

きっとそんなもんだよと付け足した。


そんなものなのかな、と首を傾げたわたしに、そんなものだと笑う雪。

クスクスという笑い声が、帰り道に響いて溶けていく。


やがて駅にたどり着いて、いつもよりも遅い電車に乗り込んだ。

いつもよりも遅く帰宅ラッシュのためか、電車の中はやけに混雑していた。


でも、わたしたちのいろいろと話す声が電車に響くから、コソコソと声を小さくしていた。

学生が少ないらしくわたしたちの話し声ばかりが響くのだ。

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