ハッピーエンドなんていらない
突然そんなことを言い出す雪の気がしれず、じぃっと見つめる。
「雪、紫苑のこと好きじゃん」
口からポロリと出た本音に、雪の顔が一瞬歪んだ。
それはなんとも言えない表情で、苦しそうな切なそうな表情で。
「…、そうだけど…」
間をおいた返事はどこか嘘を言っているようにも見えた。
でも、雪がまだ紫苑のことを好きであるのに間違いはないだろう。
「それなのに、なんでわたしなんかと付き合うの?」
素直な疑問を雪にぶつける。
街の明かりに照らされたまま、雪は下を向いてしばらく黙っていた。
キラキラと輝くライトが雪を照らす。
それからぎゅっと拳を握りしめた雪が、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「俺だって、彩芽と一緒で消せないんだよ」
彩芽と一緒で、という言葉がわたしの耳にやけに鮮明に届いた。