ハッピーエンドなんていらない
消せないんだ、やっぱり雪も消せないんだ。
「だから、」と雪がそっと言葉を繋げた。
ゆっくりと吐き出される声に、わたしは黙ったまま雪を見つめていた。
「…彩芽も、おれも、気が付いたら好きになってたんだ。
だから、付き合っているうちにお互い、気付いたら好きになれるんじゃないかなって」
ほんと単純な考えだけど、なんて付け足した雪が、スッとわたしから目をそらした。
…なんだか納得のいくような言い訳に、それもそうだねと呟く。
「…確かに、付き合っているうちに好きになれる可能性はあるよね」
でも、と言いかけたわたしの言葉を、雪はわたしの口を手でふさいで遮った。
「そのほうが絶対、ずっと楽なんだ。
このまま消せない想いを抱いてても辛いだけだろう?」
わたしが何も言わずに俯くと、雪はその手をそっと私の頭に乗せてひとなでした。
雪の指の間を、さらりとわたしの髪が通る。