ハッピーエンドなんていらない



見つめ合うこと数秒、静かに流れた沈黙の中、雪がニコリと笑いかける。

その笑顔はひどく切なげで、でもどこかなにか隠していそうで。


正直、断るべきな気もした。

想いを消したいのは、消しきりたいのは確かに本音だ、本当のことだ。

だけど、消したくないのも本音に違いはないのだ。

湊への想いが名残惜しくて唇を噛み締めてみる。

わたしは、どうしようもないくらいに湊が好きで、忘れたくなくて。

でも紫苑を傷付けることもできない、最低なワガママやろうだ。


「…じゃあ、付き合う?」

考えたのちに出た答えはそれだった。

忘れたくないわたしは、きっと雪を傷付けてしまうと分かっていた。


…湊も紫苑も悲しませたくなくて、雪ならいいって言うの?

そんなことを、誰かが問いかけてくる。

わたしは心の中で首を振った。


違う、そうじゃなくて、期待してるの。

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