ハッピーエンドなんていらない
結局はわたしもハッピーエンドを望んでいるのだ。
だから、期待しているんだ。
雪と付き合っているうちにきっと、湊のことを忘れられるだろうと。
雪はふいに嬉しそうな顔をして、でもすぐにその笑みを引き締めて、手を差し伸べる。
その手の意味をすぐには理解できずに首を傾げると、雪がクスッと笑った。
「これからよろしくの、握手」
雪は優しくわたしの手をとってそっと握りしめた。
わたしもそっと握り返すと、雪がふわりと笑みを浮かべる。
結局付き合う流れになってしまった。
なんだか申し訳ないなと思っていると、握手していた手を雪がもう片方の手で握り直す。
そうして私の手と指を絡めて、優しく引いて歩き出した。
「え、ちょ、雪…?」
驚いて声をかけると、雪はなんでもない様子で振り返った。
「恋人なんだし、これくらいは」
目をそらした雪に思わずクスッと笑いかけて、そうだねと言って握り返した。