君は夜になく
絶対だからね!といいながら自分の教室へ向かう帆乃香を見送ると、思わずため息が出てしまった。
…やっぱ、疲れる。
ただでさえ、帆乃香といると視線を感じるのだ。
今も、ひそひそ話す話題には、"帆乃香の付き人"の北村真夜がいる、とでも言われているのだろう。
踏み入れた教室は、色んな音で溢れている。
椅子を引く音、少しだけ上擦った緊張しているような声、黒板消しの音、窓を開ける音、パタパタと歩く上履きの音…
時々、それらに置いていかれるような気分になる。
そうして、気持ちが焦って、上手くいかなくなる瞬間があるのだ。
久々に、頭が割れるような感覚を覚えた。
「お前、邪魔。」
真後ろから降りかかった声にはっとする。
「え、あ…ごめん。」
入口に突っ立っていたらそりゃ邪魔だったろう。
恥ずかしい。
俯いて避けると、その男子はさっさと中に入り、席に着いたようだった。
ふと彼が気になって顔を上げて、驚いた。
「朝の、電車の男の子…」
見つめすぎたのか、無表情にこっちを振り向く。
目があった、ほんの数秒。
周りの音が聞こえなくなった。
ただ、彼の冷たい目と、ふっと鼻で笑うような表情に、なぜか見透かされたような心地がして、気持ち悪かった。