君は夜になく
着いたのは、家から20分ほど歩く距離にある、広い森公園の一角。
広場の中心には大きな噴水があって、その周りを屋根のついたベンチが囲っている。
昼間は人がたくさんいるけど、夜は驚くほど静かで、年季の入った噴水やらベンチは不気味なので、人の出入りはほとんどない。
おかげであたしは、気が向いたときに好き放題に弾きまくれるんだ。
電灯の本数は少ないけど、ギターを弾くには十分だ。
あたしは、囲ったベンチの一角に腰を下ろして、ケースを丁寧に隣に置いた。
ケースも、中のギターも古いのは貰い物だから。
ギターを取り出せば、心がざわざわと騒ぎ出す。
そういえば、2年になって初めて弾きにきた。
春休みまで毎日のように弾いてたのに。
ギターをゆっくりと撫でる。
そうすれば、風の音も、木々が揺れる音も、何も聞こえない。
代わりに聞こえるのは、自分の中の音だ。