君は夜になく
《3番線、電車が参ります。…》
朝の6:30、都心からかなり離れたからといって、通勤ラッシュを逃れられると思ったら大間違いだ。
本数が少ない分、人が溢れる。
がやがやとたてられる音に感覚が麻痺していくような気がする。
あたしの耳はどうやら特殊らしく、普通の人より音が鮮明に耳に伝わる。
電車が通る音。
人の足音。
近くに立つ女子高生の会話。
これらの音全てが、音階になって不協和音を奏でる。
無数の音が脳内を蹂躙する感覚は、高校2年目ともなると慣れてきた。
1年のはじめの頃はすぐ気分悪くなってたなあ。
特快が来るのを待っていると、後ろから女の子らしい声が一際頭に響いた。
「おはよう!真夜。」
あたしの肩ほどの身長に、ふわふわとパーマのかかったロングヘアーをハーフアップにしたお嬢様のような女の子。
彼女は、あたしの中学からの友達…一応。
「…おはよう、帆乃香。」
朝から爽やかすぎる笑顔に、若干の疲れを覚える。
早速フラグが叩き折られた音がした。