君は夜になく
おかげで中学でも高校でも、帆乃香の担当はあたしって認識が浸透してしまっている。
でもそろそろいいんじゃないか、と思ってる。
こう言っちゃなんだけど、帆乃香がいると、面倒なことが多い。
せっかくつくろうとした友達もほとんど残らなかったし、
よってくる男子は全員帆乃香目当てで危うく人間不振になりそうだったし、
ペアとかグループつくるときもセットで扱われるし…
うわ、こうしてみるとあたしって嫌なやつ。
でも、仕方ないじゃん、口ではなんとでも言えるけど、気持ちまで嘘はつけないし。
ようは口と態度に出さなければいいんだ。
あともうひとつ。帆乃香を避けたい理由が…
「…おい、おっさんなにやってんだよ。」
低く気だるそうな男の人の声に意識が引き戻された。
声のする方を何とか首を動かして見ると、目に涙を溜めて震えている帆乃香と、帆乃香を庇うようにして立つ同じ高校の制服を着た男の子、そして青ざめてひどく汗をかいている太ったおじさんがいた。
…この状況から導かれることは、ひとつしかなかった。
乗客の人たちもざわめきだす。
「わわ、私は別に…」
「別に、なに?」
問い詰めようとする彼に待ったをかけたのは帆乃香だった。
「あ、あの…!私は大丈夫なので…!」