君は夜になく



真昼兄さんは、あたしの7歳上で今は社会人。一人暮らしをしている。

中学生の頃は、兄さんは大学生だったからまだ家にいて、帆乃香を家に連れてきたときに一目惚れしたらしい。


「ねえ、真昼さん、次はいつ帰ってくるの?」

「あー、うん。今度聞いとく。」

「本当!?絶対だよ!」

「聞けたらね。」


歯切れが悪くなるのは、兄さんのことで帆乃香に言えないでいることがあるからだ。

それに、多分次帰ってくるときは…


「あ、見て!桜とっても綺麗!」


気づけば、校門まで来ていた。
校門に被さるように広がる枝に、淡いピンク色が溢れている。
あたしたちの学校の桜は、美しいことで有名なのだ。

去年も驚いたっけな。


「うん。綺麗。」

けどあたしは、風でざわざわと揺れる音が少し、耳障りだと思った。

去年ほど、純粋にはなれない。


「クラス替えの紙配ってるみたい。早く行こう?」

「…そうだね。」


あたしたちは、人の流れに乗って、クラス替えの紙を貰いに歩いていった。





< 9 / 23 >

この作品をシェア

pagetop