君は夜になく
真昼兄さんは、あたしの7歳上で今は社会人。一人暮らしをしている。
中学生の頃は、兄さんは大学生だったからまだ家にいて、帆乃香を家に連れてきたときに一目惚れしたらしい。
「ねえ、真昼さん、次はいつ帰ってくるの?」
「あー、うん。今度聞いとく。」
「本当!?絶対だよ!」
「聞けたらね。」
歯切れが悪くなるのは、兄さんのことで帆乃香に言えないでいることがあるからだ。
それに、多分次帰ってくるときは…
「あ、見て!桜とっても綺麗!」
気づけば、校門まで来ていた。
校門に被さるように広がる枝に、淡いピンク色が溢れている。
あたしたちの学校の桜は、美しいことで有名なのだ。
去年も驚いたっけな。
「うん。綺麗。」
けどあたしは、風でざわざわと揺れる音が少し、耳障りだと思った。
去年ほど、純粋にはなれない。
「クラス替えの紙配ってるみたい。早く行こう?」
「…そうだね。」
あたしたちは、人の流れに乗って、クラス替えの紙を貰いに歩いていった。