君が扉を開く時
3.痛む胸
 目が覚めて、最初に見えたのは、オレを心配そうに見守るグァンヨンの顔だった。

 「まだ寝てて大丈夫だから、無理して起きるな。」
 「今、何時?」
 「夕方4時半。オレが帰ってきたのが1時過ぎだったから、もうそれからでも3時間以上は経ってるけど…。」
 「そんなに早く戻ったのか?夕方の予定じゃなかったっけ?」
 「前の便に間に合ったから早く戻ったんだ。そうしてよかったよ。」
 「そっか…。」

 まだぼんやりしていて、頭が回らない。そもそもオレは何でこんな昼間に寝ちゃってるんだろう?昨夜、どうしたんだっけ?…途端に胸がズキッと痛んだ。顔が苦痛で歪む。

 「大丈夫か!?」

 突然オレが顔を歪ませたから、グァンヨンが驚いて声を掛ける。

 「グァンヨン、華が…。」
 「華がいなくなったのか?」

 ただ頷くしかできない。言葉にすると、泣けてきそうで…。

 「そういうことか…。だから…。昨夜、華からLINEが来てたんだ。『今、どこ?帰りはいつ?』って。『北京から、明日の夕方戻るけど。』って返したら、『わかった。』ってそれだけ。でも、何かヘンだなと思って、だからそれもあって早く帰ってきたんだよ。華のヤツ、もうその時点で決めてたってことか。でも、ソンハには予告なしだったのな?」
 「いつもとは違ってた。何かヘンだとは思った。泣いたりもして…。けど、話は何も。朝、カギが置いてあって、メモもなかった。一切連絡も取れないんだ。」

 話している内にやっぱり泣けてきた。

 「わからないんだ。何も…。切られた。それだけ…。」
 「ソンハ…。」

 黙ってオレをハグしてくれるグァンヨン。2年前とは逆の立場のオレ達。

 2年前には、グァンヨンが彼女を交通事故で失って、本当に後を追って自分で命を断ってしまうんっじゃないかと思ったほど、大変だった。それが、今度はオレが…。

 確かにオレ達はシンメとしてずっと助け合って、誰よりもお互いを理解し合ってきた。プライベートでは友達以上の存在で、この仕事をしている上でも言わば運命共同体ではある。だけど、だからって何も揃って彼女を失う羽目になるのまで同じじゃなくていいのに…。


 自分でも華に切られたことで、こんなにダメージを受けるなんて思わなかった。失って初めて、自分の華への想いの深さを知った。

 もっと早くそれがわかっていたら、こんな結末を迎えずに済んだのだろうか?夜1人になるとそんな風に考え込んで寝られなくなったオレ。それに気づいたグァンヨンが、夜は一緒にいてくれるようになった。仕事で一緒にいられない時も寝るまで電話で声を聞かせてくれてた。迷惑を掛けてるのはわかっていたが、1人が怖くて、しばらくの間甘え続けた。1人で普通に寝られるようになるまで1か月以上かかった。

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