お前しか見えてないから。*特別番外編*

すぐ近くのバス停まで先に着くと、ナツくんが振り返る。



「今日さ、そのマフラー、なるべくしてて」



「え?うん…」



よくわからなかったけれど、とりあえずうなずいた。



するとそこにすぐ花鈴たちが追い付いてきて。



「夏希ー!待ちなよーっ!!」



「ゲッ、来た…」



こちらへ向かってくる花鈴の顔は、やけにニヤニヤしている。


それをまるで避けるかのようなナツくん。



ナツくんは私の手をぎゅっと握ると、耳元で小さくつぶやいた。



「もうさ、今度はあいつらナシで来よ。

うるせぇから」



えっ…。



その言葉にドキッとする。



“あいつらナシで”ってことは……


“二人きりで”ってことだよね?



ナツくんと二人きりで旅行…。


考えただけでドキドキしてくる。


でもすごく行ってみたいかも。



「うんっ!」



思わず元気よくうなずいたら、ナツくんはクスッと笑って、手をまたぎゅっと強く握ってくる。


だから私もその手を強く握り返した。



次の旅行も、来年も、そのまた先もずっと、ナツくんと一緒にいられたらいいなぁ…。



ナツくんとこれからも、たくさんの思い出を作れますように。



そんなことを思いながら…。



間もなくしてバスがやってきて、私たちは笑顔で四人、それに乗りこんだ。



楽しい旅行はまだまだ続きそうです……。



特別番外編*fin.*


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