いつか必ずあなたの心掴むから
静はバイクに乗るのは初めてだった。


怖い。必死で男の胴に腕を巻きつけつかまっていた。


ふかすエンジンの音とゴーゴー唸る風。


静はどこで降ろされるのだろうかと思った。


でも何故かこの男の背中が気持ち良かった。



バイクはマンションの地下駐車場に止まった。


静はバイクから降りて


「助けてくれてありがとうございます」


と頭を下げた。


この男が神様みたく思えた。



ヘルメットを外した男はまたバイクのボディを触った。


「チッ」と舌打ちをした。


静が覗き込むとバイクに縦の傷がつきメタルが剥げていた。


「ごめんなさい・・私のせいで・・」


と静は謝った。


すると男は静の顔をジッと見た。


上から下まで目踏みするように見ている。


「あ、あの・・?」


「俺の部屋に来る?」


と聞かれた。


「え??」


「助けてやったんだ、来いよ」


と今度は命令口調で言われた。


「あ、あの」


と口ごもっていると男はさっさと歩き出した。


振り返りもしない。


静は迷ったが男の後を追った。
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