いつか必ずあなたの心掴むから
廊下の先は広いリビングだった。


テーブルを挟んでソファが二つ向き合っていた。


彼は足をテーブルの上に乗せ煙草を吸っていた。


私が突っ立っていると、


「好きなとこ座れば?」


と言われた。


私はおずおずと彼の向かい側に座った。



カチっとスイッチの音がした。


彼は立ち上がりカップに液体を注いでいた。


コーヒーの香りだ。


彼は面倒くさそうにカップをテーブルに置いた。


飲めよ、言うように私を見た。


ブラックなんて苦くて飲めないよ。と思ったけど意外と美味しかった。



彼は煙草の煙を天井に向かってはきながら、


「お前、当分街ん中歩けねーぞ」


と言った。


私はカップを持ったまま「え?」と言った。


「アイツらはやくざだ。


 しかも下っ端のチンピラ。やり方が汚い。


 マジでソープにでも売られるかもな」


と彼は薄笑いを浮かべた。


「そ、そんな、助けて下さい!」


と私は思わずカップを絨毯の上に落としてしまった。


黒いシミが絨毯に滲んでいく。


彼は動じた様子もなく、


「行きがかり上とはいえ俺はあんたを助けちまった。


 俺もただじゃ済まないだろうな」


と煙草をくわえた。


「どうしたらいいの・・・?」


私は絨毯の黒いシミを見ながらつぶやいた。



「俺さ、サツとやくざは大嫌いなんだよ」


と彼は私の顔を見た。


やっと私は彼の顔をまともに見た。



ドストライク!だった・・。
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