始まりの青
side 波音
三月一日。とある県立高校のプールサイド。現在の時刻、午後一時。


今日は卒業式だった。


すでに式典は終わって、部活の後輩が開いてくれた送別会もたった今終わった。


プールサイドに一人残ったあたし――菊池波音は、後輩から貰った小さな花束を抱えてスタート台に座ってる。


今日は、三月の頭にしてはあったかくて、空もきれいに晴れてる。


風も穏やかで気持ちいい。


卒業式日和ってやつね。


同級生や後輩たちは、このあと開かれる『お疲れ様会』という名のカラオケボックスでの打ち上げへ向かったみたい。


フェンスの向こうに、笑いながら歩いている友達が見える。


「みんな、またね」


一人つぶやいて、あたしはひざを抱えた。


水を抜いたプールはなんだか寂しい。


底の四隅にたまった枯葉が風でくるくると回って、なおさら寂しさを募らせる。


今日で卒業したんだなぁ。


なんだがまだ実感がない。


制服を着るのも今日が最後なのに、ぜんぜんそんな気がしないの。

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