始まりの青
「そういえば、制服のままでここにいるのって初めてかも」


思わずつぶやいちゃったけど、ホントにそう。


制服でプールサイドに入ったことは一度もない。


去年までの送別会は部室でやったから、プールサイドまで出なかったんだよね。


「あれから、もう一年たっちゃったんだ」


思い返せば、たっくさん出てくる思い出。


あたしはこのプールに、水泳部の誰よりも多く入ってた。


海合宿に行けないあたしを、このプールは受け入れ続けてくれていた。


考えてみれば、顧問も寛大な人よね。


海に行けないからって、一生徒に学校のプールを使わせてくれてたなんて。


「下島センセに感謝」


ぺこり、と誰もいないプールに頭を下げていると。


「……打ち上げ、行かないのか?」


不意に、背中から声をかけられてびっくり。


振り返れば同期の元部長、広瀬祐が立ってた。


広瀬も後輩から貰った花束を小脇に抱えてる。

< 11 / 24 >

この作品をシェア

pagetop