始まりの青
「え……と」


いきなりすぎて、まともな思考が結べない。


パニック状態で答えられずにいると、広瀬は苦笑して、いいよと言った。


「分かってるんだ。俺のこと、菊池はなんとも思ってないって」


「そ……ういう言い方は」


「でも、事実だろ?」


畳みかけるように言われると、うなずくしかないじゃない。


押し黙るあたしを、広瀬はなんだか妙にすっきりした顔で見てる。


「一年のときから、菊池は目立ってた。いい意味でも、悪い意味でもな。なんだか危なっかしく見えて、でも同級生の誰より大人びて見えた。最初の海合宿のときから、菊池のことが気になりだしたんだ。どうして海に入れないのかって」


それは普通、だれだって思うよ。


海に入れないのに水泳部って、どっからどうみたって変だもん。


「菊池が、泳ぐことは大好きなんだって分かってから、不思議と海に入れないことは気にならなくなった。けど、もう菊池から目が離せなくなってたんだ」


ぜんぜん……気づかなかった。


広瀬がそんなこと思ってたなんて。


「二年になっても、三年になってもその気持ちは変わらなかった。けど、菊池は周りと距離を置いてる感じがして、とてもじゃないけど告白なんてできなかったよ。同じ部活だし、ふられたら後々気まずいだろ」


< 16 / 24 >

この作品をシェア

pagetop