始まりの青
確かに……広瀬もあたしもぎくしゃくしただろうな。


うなずくと、広瀬もそうだろ、と少し得意げ。


「でも、三年の海合宿を境に、菊池は変わったよ」


「え?」


「菊池を囲ってた壁がなくなった。前より近く感じる。それで……去年の十月。部活も引退してしばらく経ったし、近寄りやすくなった菊池に告白しようと思っていた矢先。聞こえたんだ。……好きな人がいるって」


……さくらとの会話だ……。


好きな人がいるなんて話、美術室でさくらにした以外、一切してない。


「俺に対して、菊池の態度は変わることがなかったから、俺に見込みはないと分かったわけだけど。それでも最後に、けじめつけたかったから。……悪かったな。びっくりさせて」


すまなそうにする広瀬に、あたしはあわてて手を振る。


「ううん。あ、びっくりしたのは本当だけど。ええと……その………………ごめんなさい」


なにに対して謝ってるのか……それとも全部かな? 


とにかく謝らなきゃ、と頭を下げると、広瀬は。


「菊池が謝ることなんてなにもないよ。この告白は俺の自己満足だから。…………最後、だからさ」


じゃあ、またな。


そう言って、広瀬はプールサイドからいなくなった。

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