始まりの青
「来ると、思ってた」


初めて見るスーツ姿の海音にどきどきしながら、手招きに従って近寄る。


「先生も、残ってると思いました」


今日で最後の制服姿の波音がまぶしく見えて、目を眇める。


「今日まで待ったからな」
「今日が最初の日ですから」


かぶってしまった言葉に一瞬きょとんとして、同時に噴出す。


ひとしきり笑った後、海音はそうだよな、と言って、波音の言葉を繰り返した。


「確かに、今日が最初の日だよな」


今日から始まる、自分と波音の関係。


教師と生徒じゃなく、新しい立場で向き合える最初の日。


波音もそう思っていてくれていたことが、うれしかった。


波音も、そうですよね、と言って、海音の言葉を復唱する。


「確かに、今日まで待ちました」


言葉にすることさえできなった、自分と海音の気持ち。


今日からは、何にさえぎられることなく伝えられる。


海音も同じ気持ちでいてくれて、ほっとした。
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