始まりの青
「あ……と、そうだ」


何か急に思い出したのか、ちょっと待ってろ、と言い置いて、美術準備室に入っていく。


その後姿を見ながら、波音はおとなしく待っていた。


ものの数分で戻ってきた海音の手には、A3サイズほどの、すこし厚みがある封筒……と思いきや厚紙の箱。


「これ、卒業祝いに」


「え……?」


両手で差し出されたそれを、波音は反射的に受け取ってしまった。


思ったよりずしりと重さを感じるその包みと、海音の顔を交互に見る。


海音はちょっと照れくさそうに頭をかいた。


「本当は花束を用意しようと思ったんだけどな。それだとあんまり芸がないだろ? だから、俺にしかやれない祝いをやろうと思って」


開けてみろ、と視線で言われたので、波音はそっと封を開けた。


中から出てきたのは。


「……絵?」


「これからの、俺とお前。……まあ、こうあれたらいいだろうな、っていう俺の願望……かな」


キャンバスに描かれていたのは、うつくしく輝く、青い海。


それと、その海を背景に固く結ばれた二つの手。

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