始まりの青
本当は、今日まですごく不安だった。


あの海での約束を、覚えていてくれるかどうか。


そんなことはないだろうと思っていたけれど、万が一、そのときの雰囲気に流されて約束してくれたんだとしたら……?


聞くに聞けない状況と関係。


それでも、あの約束を信じて今日、ここに来た。


もしも、約束を覚えていなくても、気持ちだけは伝えたかった。


「今日からまた、よろしくお願いします」


自分だけのために絵を描いてくれた海音に、不安はきれいに消え去った。


「ああ。これから、よろしくな?」


差し出した手を、波音が握る。


そっと触れるような手を、海音は力強く握り返した。
 




――キャンバスに描かれた、二つの手のように。
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