始まりの青
二学期の初めに駅……ねぇ。


与えられたヒントをもとに記憶をたどっていくと……ああ、そうか。


今見ている顔にたどりついた。


確かに俺は三田と面識がある。


駅で何があったか言わないのも納得。


三田は、電車の中で痴漢にあっていたんだから。


「……思い出した。悪かったよ、すぐに気づかなくて」


具体的に『あの時の』とはとても言えず、あいまいにごまかす。


それに首を振っていいんです、と三田。


「あのあと、お礼もいえずにすみませんでした。あの時は助けていただいて、どうもありがとうございました」


深々と頭を下げる三田に、俺はあわてる。


「いや、別にそこまでたいしたことしたわけじゃないし。……うちの生徒があんな目にあってたんだから、当然のことしただけ」


お礼を言われるようなことじゃないんだ、本当に。


だって、俺はあの時――勘違いしてたんだから。

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