始まりの青
「……好きです」


………………予感的中。


告白タイムだ。


胸の前に握られた三田の両手が震えている。


髪からのぞく耳は真っ赤で、相当緊張しているのが分かった。


「駅で、先生に助けてもらったときから、ずっと好きでした。でも……生徒でいる間はきっと相手にしてもらえないと思って、今日まで……待って」


三田の判断は常識的で、正しいと思う。


好意を寄せてくれるのも、うれしくないわけじゃない。


でも、好きになるきっかけが……なぁ。


これはいわゆる『恋のつり橋理論』ってやつだ。


生理的に興奮した状態を、恋愛感情だと錯覚する。


痴漢にあった恐怖を、恋のときめきに変えて認識してしまったんじゃないか?


はっきりそうだと断言できないけれど、それに近いだろう。


だけど、そんなこと言えるわけないし。


困ったな……。


「……ありがとう」


まずは、礼を言っておく。


すると、勢いよく三田が顔を上げる。目が期待に輝いていた。


ああ、悪いことしたな。


俺の答えは、申し訳ないけど期待には添うものじゃない。



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