始まりの青
「でも、ごめんな」


三田にとっては残酷な一言を、それでもきちんと伝える。


それが、俺にできる精一杯の誠意だ。


みるみる潤んでくる瞳に罪悪感を持つけれど、ここで視線を逸らしちゃいけない。


ひとかけらの期待もさせちゃいけない。


「彼女が、いるんですか?」


涙声の問いかけに、首を振る。


「いないよ」


「じゃあ……私が子供だから?」


「そういうわけじゃない」


「……どうしてですか?」


言外に、こんなに好きなのに、と訴えてくる。


必死に言い訳を探す三田。


『彼女がいるから』、『子供だから』。


自分が選ばれなかった『言い訳』を作りたい気持ちは分からないでもないけれど、それは軽い現実逃避だ。


恋愛っていうのは、お互いの気持ちがかみ合わないと意味がない。


一方が好きで、もう一方に恋人がいないからって恋愛ができるわけじゃない。


彼女もいない、子供だから選ばないんじゃない。

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