ただひたすらに君が好きだよ。

-下校-

「今日はこの辺で終わるか、
チャイムもなったし....」

日が落ちるのが早くなってきた、夏の終わり、気づけば外は少し薄暗かった

「そうですね、これなら明日には終わりそうですし」

「ほとんど、やったの千鶴....」

「そんなことないですよ、
十分やってましたよ!!、春樹先輩は....」

私たちは休憩と称して、少し座りながら話す

「なんだその、春樹はってのは、
千鶴ちゃんなんか俺に冷たくない?」

「だって宏斗先輩、自分のロッカーすら
終わってないじゃないですか....」

「ハハハ、片付けって苦手なんだよなぁ...

じゃあ、今日はファミレスで好きなもん奢ってやるから、それで許して?」

「許しません、先輩、私に食べ物与えとけばどうにかなると思ってません?」

ゴマをするように言ってきた先輩

「それに、今日、他に約束があるので
先に失礼します」

少し怒りながら席を立つ

「千鶴、一緒に帰らないの?」

春樹先輩がスッと私の腕を引っ張り
座ったまま上目づかいで聞いてくる

か、かわいい...!!!

「は、はい、今日はちょっと...」

「約束、だれ?」

なかなか腕を離してくれない先輩

「あっ、それは..」

『ガラッ』

「俺です。」

突然部室に入ってきたのは小鳥遊くんだった、小鳥遊くんはそのまま

先輩に掴まれた私の腕を引っ張って

「突然お邪魔してすいません、
それじゃ、失礼します」

そう言い残して私の腕を掴んだまま
部室を出た

「まさか、宇都宮じゃないほうだったのか....、ノーマークだったぜ...」

「????」

部室を出てすぐ、ため息混じりに何か言った小鳥遊くん、その言葉の意味は
私にはよくわからなかった

「まぁ、とりあえず行くか」

「うん!!」

思い返してみると、2人だけで帰るなんて今日が初めてかもしれない...

「時田はさ、部活ん時いっつもあの先輩たちと帰ってんのか?」

当たり前のことだけど、並んで歩いていると小鳥遊くんの表情がよく見えない

いったい、どういう意図で聞いてるのかな? って、そんなに深い意味もないか...

「そうだよ、もとは先輩たち2人で帰ってたんだけど、1人で帰ってる私見て
気を使ってくれてるんだと思う...」

「そうか.....、」

小鳥遊くん、なんか疲れてるのかな?
いつもより雰囲気が暗い

「うん!、最初は大変だったんだよ、
春樹先輩、私に何か言いたい時は
宏斗先輩に伝えてて、

全然直接話してくれなかったから」

「今は、随分仲良くなったんだな」

トーンの低い小鳥遊くんの声が気になる

本当に大丈夫かな?

「そうかな?、そう見えたなら嬉しいけど、

でも、まぁ、最初に比べたら全然
話してもらえるようになったかな」

なんか、本人のいないところでこんなこというの恥ずかしいな...

「よかったな」

やっぱ、聞いたほうがいいよね
絶対様子おかしいもん

「小鳥遊くん、もしかして具合悪い?」

「えっ!?」

「なんか、疲れてるみたいだし
声とか顔つきとかなんか、ツラそう」

「あ、ごめん、具合悪いとかそういうんじゃないんだ、悪かった...、
なんかぼーっとして..」

「そ、そっか、ならよかった
こっちこそ変なこと聞いてごめん」

『ぼーっと』......か、

「なんで時田があやまんだよ、
心配してくれてありがとな(ニコッ)」

小鳥遊くんは急にこっちを向いて頭を撫でてきた

「//////っ!!!、う、うん..」

私、今日何回小鳥遊くんに心臓壊されてるんだろ!?

でも、小鳥遊くん、笑ってくれた
つまらないとか、じゃないよね?

「あーあ、俺も書道部にしとけばよかったかなぁ〜」

頭に手を置いまま少しかがんで
私と目を合わせたまま、ため息混じりにいう

ちょっと長めの黒髪が夕日に照らされ
少し茶色く見える

小鳥遊くんの目には、私が写っていて
また、無性に恥ずかしくなる

「//////だっ、ダメだよ!!、
小鳥遊くんいなかったらサッカー部が
困っちゃうよ!!」

「そっか、それもそうだな」

そう言いながら、手を頭から降ろして
前を向く

本当は、小鳥遊くんのサッカー見られなくなるのがイヤだから

なんて、私には口が裂けてもいえないけど....

「うん!!、期待のエースだもん!!」

「ハハ、そこまで言われると、
頑張らなくちゃな!!

時田は、なんですみれと同じ弓道じゃなくて、書道にしたんだ?」

「うーんとね、単純に言えば書道のほうが馴染みがあったから?かな」

「やってたのか?」

「うん、前にね」

「字、綺麗だもんな、時田のだって
すぐにわかる」

「あ、ありがと///」

わぁ.....、楽しいな、こんな風に2人だけでゆっくり話せるなんてきっとすごく
贅沢なことなんだろうけど

今日だけなのが、すごく寂しい

欲張りだなぁ、私.....
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