私、今から詐欺師になります
「本当に七億返したら、茂野はお前と離婚してくれるのか?」

「どうでしょう。
 わかりませんけど。

 あの人、すぐに世間体がどうとか言いますからね。

 俺が妻に逃げられるとか、周りになにを言われるか、と怒っていました。

 貴方が私を捨てたことにすればいい、と言ったんですが。

 そしたら、今度は、妻を捨てる非人道的な男だと思われるのが嫌だとか言い出して。

 だったら、武田信玄が、三年は自分の死を隠せと言ったみたいに、私も何処かに隠居でもしてることにして、存在を隠しておいて、フェイドアウトさせたらどうかと言ってみたんですが」

『誰が武田信玄だっ。

 じゃあ死ねっ。
 今すぐ死ね!』

「――とか言い出して」
と言うと、

「……本当に居るんだな。
 俺のものにならないのなら死ねとか言う男」
と呟いていた。
< 100 / 324 >

この作品をシェア

pagetop