私、今から詐欺師になります
「ところで、喉が渇きませんか?
 私、奢りますよ。

 たくさん、奢っていただいたので」
と少し先のベンチの側で明るい光を放つ自動販売機を指差すと、穂積は笑う。

「……詐欺をして、俺から金を巻き上げるんじゃなかったのか」
と。

 わあ、と思っていた。

 いつも、秀行さんの邪悪な笑顔しか見てないから、余計に優しげに見えるなーと。

 いや、穂積もあまり愛想の良い方ではないのだが。

 ただ寡黙なだけで、秀行のように、なにか企んでそうには笑わないから。

「奢りたいんです。
 奢らせてください」
と言い、自動販売機で珈琲とココアを買った。

 二人で、ベンチに並んでそれを飲む。

 間で会話が途切れ、穂積と目が合った。

 なんだか照れて、目線を外してしまう。

「どうした?」
と問われ、

「いや、なんだかデートみたいだなって」
と赤くなったまま言うと、

「いや……デート以外のなんなんだ」
と言われた。
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