私、今から詐欺師になります
 



「落ち着いてよく考えてみろ」
とまるで大学で教授がご講義くださるように、穂積が語り出した。

「お前は、結婚詐欺をして、俺から金を巻き上げようとしてるんだろ?」

「はい。
 でもあの、穂積さんからお金を巻き上げるとか……」
と否定しようとすると、

「今、どう思ってるかはいい」
と止められる。

「もともとはそのつもりだったんだろ。
 結婚詐欺っていうのは、男と付き合って、相手をその気にさせて、金を出させる仕事だ。

 いや、仕事じゃないが。

 ともかく、キスのひとつもさせないのはおかしいだろう」

 そう改めて言われて考える。

 自分は、本当に穂積にそんな非道な真似をして、金を巻き上げようとしたのだろうか?

 穂積と最初に会ったときのことを思い出しながら、ゆっくりと語る。
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