私、今から詐欺師になります
初めて聞いたな、こんな話、と茅野は思っていた。
辛かったのだろうが、二人の表情も語り口調も淡々としている。
そういうところは見せないようにしているのだろう。
だが、秀行は、
「なんだろう。
いまいち同情出来ないうえに、かける言葉が違う意味で見つからないんだが」
と呟いていた。
金があったから、苦労はしなかったというところが問題なのだろうかな、と思っていた。
秀行の実家も父親が体調を崩したときに、経済的に苦しくなって、高校の頃は、なかなか苦労したようだったから。
こう見えて、秀行は涙もろいのだが、泣くポイントがなかったようだ。
「なんの話だったかな……」
お前らが混ぜっ返すからわからなくなったじゃないか、と文句を言う。
私にはいつも、混ぜ返されてわからなくなる程度なら、たいした話じゃないんだろうと言う癖にな、と思っていた。
「そうだ。
俺は金を返しに来たんだった」
返したぞ、と確認するように穂積に言う。