私、今から詐欺師になります
「ただいま」
秀行の声が聞こえ、茅野は慌ててそれを隠した。
「お、お帰りなさい」
と立ち上がる。
秀行は、リビングに入るまで、音を立てずに来たようで、いつの間にか近くに立っていたのだ。
「……今、なに隠した」
「な、なんでもありません」
「見せてみろ」
「えっ。
いやですっ」
「なんでだ?」
「貴方に見せるとハズレる気がするからですっ」
はあ? と言いながら、秀行は茅野が新聞紙の下に突っ込んだものを引っ張り出す。
広告の裏に数字が羅列してあった。
「なんだこれ」
「ロトですっ」
と茅野は威張ったように言い、それを取り返そうとした。
「今日、玲さんがおっしゃってたんです。
これなら、毎週当選発表があるからって。
でも、なんだか、それも度々、ドキドキしてしまうので、落ち着かないかなと思ったり」
「莫迦なのか、お前は」
と言いながら、秀行はその紙を投げつけてきた。