私、今から詐欺師になります
「待て。
 俺はお前の夫だよな?」
と確認される。

「夫が妻に触ろうとして殺されるっておかしくないか?」

「で、でも、こんなのおかしいです。
 私は貴方を男の人としては愛してないです。

 それなのに夫婦とか。
 人として間違っています」

「人として間違ってるのは、お前と穂積の方だ」
と花瓶を払われる。

 花瓶が落ちて割れた。

「……俺を怒らせるなよ、茅野。

 お前は俺が金で買ったんだ。
 穂積からの金は受け取らない。

 お前が七億当てても……。

 待てよ。
 そういや、七億当てても、半分は夫である俺のものだよな」

 じゃ、三億五千万しかないじゃないかと言われる。

「宝くじなんぞ当てても無駄だ。
 どのみち、お前は俺からは自由になれない運命なんだ」
と髪をつかまれ、上を向かされる。

 茅野が秀行の顔を見つめ、
「……それはつまり、二回当てろってことですか?」
と問うと、

「大真面目な顔でなに言ってんだ」
と秀行が手を離した。
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