私、今から詐欺師になります
「気が抜けたご飯にしろ」
とこちらに背を向ける。

 はい、と言いながら、茅野はチリトリと箒を取りに行った。

 花瓶を片付けていると、秀行がガムテープを持ってきて、破片を取ってくれる。

「あとで掃除機で吸え。
 しばらく裸足で歩くなよ」

「はい」
と言ったあとで、茅野は笑い出す。

 なんだ? と秀行が見た。

「だって、こんなの、おかしいです。
 今、殺し合おうとしたのに、こんな隅に二人でしゃがんで、頭付き合わせて掃除してるとか」

 あはは、と笑うと、ガムテープで頭をはたかれた。

「おかしいのは、お前の頭だ」

 第一、殺そうとしたのはお前だけだ、と言われる。

「あとは俺がやっておくから、さっさと支度しろ」

 はーい、と茅野は立ち上がる。

「そうだ。
 今日は……」
とメニューの話をしようと振り返ったとき、秀行がテーブルに手をついてじっとしているのに気がついた。

「……秀行さん?」
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