私、今から詐欺師になります
なんて恐ろしい呪いだろう。
監禁されるよりタチが悪いな、と思っていた。
いっそ、諦めてしまおうか。
なにもかも。
あの悪魔に出会ったときに、私の人生はもう終わったんだと。
穂積の前で、扉を閉める自分の夢を見て、泣いて目を覚ました。
半身を起こし、朝の日差しの中、すやすやと眠っている秀行を確認する。
枕許に置いていた、今にも壊れそうな古い自分の携帯を開いた。
穂積の番号に合わせたが、かけなかった。
心の中でだけ問いかける。
穂積さん、風邪は大丈夫ですか?
病院には行きましたか?
寝過ごしてはいませんか?
寝過ごすって……私じゃあるまいし、と笑った瞬間、ちょっとだけ、涙がこぼれた。