私、今から詐欺師になります
一度始めたことは最後までやれ
「おはようございますー」
月曜日、茅野は元気に出社した。
秀行の方は、翌日には退院し、動いた方がいいからと土日は仕事に行っていた。
「おはよう。
大変だったねー。
茂野社長、もう石出たの?」
と八重島が訊いてくる。
「それがわからないんですよ」
「出たら、カンッて音がするよ」
「そう聞いたんですが、特に出てはないようなんですよ。
でも、もう痛くないみたいで」
知らない間に出たんですかね? と小首を傾げる。
「それ、あれじゃない?
いつまでも出てないって言って、奥さんに甘えたいだけなんじゃない?」
からかうように笑って言っていた有村が、おっとっ、と言葉を止める。
穂積が横を通ったからのようだった。
みんな慌てて、おはようございます、と挨拶している。
「おはようございます」
と茅野も挨拶したが、振り返らずに、穂積はみんなに小さな声で挨拶を返しただけだった。