私、今から詐欺師になります
「ほら、俺も穂積も中身は似たようなもんだ。
 どっちでも一緒だ」
と秀行は結論づけようとする。

「このまま此処で暮らせ、茅野。
 たまには穂積と会ってもいい」

 俺とは夫婦で居ろ、と言ってくる。

「だ、駄目です。
 それはもう無理です。

 ずっと、貴方を捨てて出てはいけないと思っていました。

 だけど、私、貴方と夫婦で居ることには、ずっと罪悪感を感じていました。

 好きでもないのに、そんなことしちゃいけないんだって。

 でも、私、穂積さんとキスして初めて、いけないことじゃない気がしたんですっ」

「そっちがいけないことだ、バカものっ」

「気持ちの問題ですっ」

「見ろっ、恐ろしい女だっ」
と秀行が何故か穂積に同意を求め、叫び出す。

「確かに。
 そのうち、俺もいけないことになるんじゃないのかという恐怖はあるな」

 貞操観念が強過ぎるのも困りものだな、と穂積までが言い出した。
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