私、今から詐欺師になります
「お前を閉じ込めたことは謝る。
 いや、物理的にじゃなくて」
とまだ手錠に繋がれている茅野を見ながら、秀行は言う。

「お前の方が勘もいいし、仕事も出来るかもしれない。
 だが、俺の側から飛び立っていって欲しくはなかったし。

 俺自身、お前の勘を当てにしていた部分もある」

 だから、外に出したくなかったのかもしれない、と秀行は言ってきた。

 珍しく自信なさげに。

「勝負勘とか関係ないですよ。

 それに、いつもギリギリのところで、貴方を救っているものは勘じゃないです。

 あなたの経験に基づく知識と貴方自身ですよ」

 ……ありがとう、と目を伏せ、秀行は言った。

 茅野は秀行を真っ直ぐに見つめて言う。
 その心に届くように。

「秀行さん、貴方はいい夫だったと思います。

 貴方を愛せたらと思ってました。

 ……なんで人の心はこう、思い通りにならないんでしょうね?」

 その言葉は茅野の本音で、心からの問いかけだった。

 二人にというより、人生というものに対して。
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