私、今から詐欺師になります
「いや、二人とも私から距離を置くと貴方がおっしゃったんですよ」
と言う茅野の小さな顔を両手でつかみ、秀行は自分の方を向かせようとしたが、茅野は視線を逸らそうとして、くしゃみをした。

「……風邪か?」

「そうですかね?」
と鼻を啜る茅野に、秀行がこちらを指差し、叫ぶ。

「こいつの風邪じゃないのか?」

 俺に移すなよっ、と言う。

「お忙しいですもんね」
と言うと、

「こいつから移った風邪というのが嫌なんだっ」
と叫び出す。

 茅野の目が、いや、貴方が私を全裸でトイレに監禁したからじゃないですかね? と訴えていたが、口にはしなかった。

 みんなが覗いているからだろう……。

 また戸口にトーテムポールが出現していた。

「秀行さん、風邪は天下の回りものですよ。
 一年前に貴方がひいてた風邪かもしれませんよ。

 感動の再会ですね」
と茅野が言い、

「また訳のわからんことを言い出すな。
 だいたい、一度ひいた風邪をひくわけないだろうっ」
と秀行が叫ぶ。

 覗いている有村も八重島も、玲もみんな笑っていた。





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