私、今から詐欺師になります
エピローグ
実家に帰った茅野はまた図書館に勤めていた。
司書の仕事は今は空いておらず、ボランティアという形で募集されていたものに応募したのだ。
「まーた、戻ってきたな。
もう出戻りか」
と珈琲をくれたおじさんが言ってきた。
ちょっと嬉しそうに。
実家に帰ってからは、まだ、穂積とも秀行とも会っていない。
「よし」
と頑張るぞ、と返却された本を並べていると、緑の多い図書館の庭を揉めながらやってくる二人が見えた。
……同じ日に来なくてもな。
秀行が言うように、実はこの二人、似ているのかもしれない。
というか、実は気が合っているのか?
だったら、確かに出会い方が違っていたら、自分は秀行を愛せていたのかもしれないが。
穂積がこちらを向いて、手を振る。
茅野は、はにかむように笑い、振り返した。
それに気づいた秀行が穂積の足を踏むのが見えた。