私、今から詐欺師になります
「今はいいが、以前は、かなりお前の父親に無理して金を回してたんだ。

 それに、お前と離婚すると、うちも資金繰りが上手くいかなくなる。
 お前の父親、人柄と家柄で、信用だけはあるからな。

 俺の会社みたいな、学生時代作ってたアプリの成功から成り上がったような会社は信用度が低い。

 お前の父親の人望と所有している不動産のお陰で、銀行も困ったときに、ホイホイ金貸してくれてるんだ」

「でも、今は、私の父の顔より、秀行さんの会社の方が信用があると思います。

 確かに、新興企業の信用度は低いけど、今の時流に乗って、勢いがあるし。
 もう五年は大丈夫かと」

 五年かよ、と秀行は渋い顔をする。

「お前の読みはなかなか鋭いからな。
 肝に銘じておこう。

 で?」

「は?」

「最近、ちょっと会社が軌道に乗ってきたからと言って、恩知らずにも、お前に、もう我慢しなくていいとでも言ったのか。
 あのお前に甘々の家族が」

「いいえ。
 みんな秀行さんにはとても感謝しています」

 いい夫だと、正月などに帰ると、下にも置かない扱いだ。
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