私、今から詐欺師になります
私、今から働きますっ
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
いつものように夫が車で出て行くのを見送ったあとで、急いで茅野は部屋に取って返した。
既に用意してあった服に着替え、バッグを手にする。
「よし」
と姿見でチェックした。
「すごーい。
OLさんみたいだ」
と自分で感心する。
いや、もともと持っていたスーツなのだが、これから仕事だと思うだけで、気持ちが引き締まり、いつもと違うように見えたのだ。
住民票は間に合わなかったから、昼休みにでも取りに行こう、と思ったあとで、昼休みか、とうっとりとする。
なんか働いてる感じがするな、と思ったのだ。
「よしっ。
行ってきますっ」
と鏡の中の自分に向かって言い、気合いを入れる。