私、今から詐欺師になります
「茅野、履歴書は持ってきたか。
それから、住民票か、住民票記載事項証明書でもいいが、今週中に持ってこい」
と言う穂積に、茅野は、はいっ、と履歴書を出す。
会社に着いてすぐ、茅野は玲に連れられ、社長室に来ていた。
「字は綺麗だな」
とそれを眺めていた穂積だったが、おかしな顔をする。
「茂野……茂野茅野」
「はい」
書き間違いでもあったかな、と茅野はその手許を見ようとする。
「茂野秀行……。
ちょっと待て。
お前、結婚してるのか」
「はい」
茂野秀行? と穂積は口の中で繰り返す。
「茂野?」
「はい」
夫の勤め先を確認したようだ。
「お前……茂野社長の嫁か?」
「はい」
と茅野は言った。