私、今から詐欺師になります
「だからーっ、そういうことじゃないんですよー。

 ほら、好きでもないのに、結婚してるとか、不純じゃないですかっ。
 愛もないのに、結婚してるなんて、売春と一緒ですよー」

 そう主張する茅野を秀行は冷ややかに見て言う。

「それ、わかってて結婚したんだろう」

 うっ。
 それはそうなんだが……。

 あのときの自分に、他に選べる道などなかった気がするのだが。

 お願いします、茅野さん。
 会社を救ってくださいとみんなに頭を下げられて。

 秀行は腕を組み、こちらを見下すように見下ろして言う。

「ともかく、俺に離婚して欲しければ、全額金を返せ。

 自分で稼いでみろ。
 そうすれば、自分のためにどれだけの金が動いているか、金を稼ぐのがどれだけ大変か、よくわかるだろう。

 世間知らずの茅野お嬢様」

「か、稼ぐって、どうやって?」
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